AKIRA

(Amazon.co.jp より)

最近4Kリマスター版が劇場公開されている、アニメ映画「AKIRA」。オリジナル版の方はAmazonプライムで視聴可能だったので、妻は初めて、僕は久し振りに見てみた。

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※ネタばれ多少あるかも。

2019年の「ネオ東京」で、超能力者・軍・暴走族がバチボコに喧嘩した結果、都市が崩壊し人が死にまくる、というストーリーなのだが、僕が注目しているのは2人の主人公である、金田と鉄雄の関係だ。

金田は暴走族のリーダーで、怪物バイクを自在に乗り回す運転テクを持つ。バイクを抜きにしても、人間離れした身体能力・喧嘩の強さ・しぶとさを備えた、なかなか凄い男だ。人柄は明るく社交的でチャラくて、そして優しい。

鉄雄は金田とは対照的に、どこか内気で自信がなく、兄のようにいつも助けてくれる金田に憧れを抱きつつも、バイクも喧嘩も到底及ばない。常に劣等感に苛まれているような状態だ。金田の偽りのない優しさも疎ましく感じ始めている。

「AKIRA」の物語は、鉄雄が力に目覚め、暴走し、やがて破滅していく様を描く。その過程で、それまでいつも一緒にいた金田と鉄雄は離れ離れになったり、再会したり、敵対したり、求めたり、助けたりし合う。

力を手にしてイキり散らす鉄雄、それをいつもと変わらない態度でたしなめる金田。いらつく鉄雄、戸惑う金田。牙をむく鉄雄、応戦する金田。泣きながら助けを乞う鉄雄、迷わず手を伸ばす金田。向こう側に行ってしまった鉄雄、残された金田。

ウジウジしていたと思ったら急にキレて暴力に走る鉄雄はもちろんだいぶアレなんだけど、そういう鉄雄の心情はきっと金田のような開かれた人間にとっては気付きにくいんだろうと思う。これは別に金田が鈍感だとか冷酷だとかそういう話ではなく、ただ一般論として人間関係においてはよくあるパターンだよなと。

憧れる側と憧れられる側、守る側と守られる側。丁度良いバランスで成り立っているが、そこにはわずかに上下の格差があって、ふとしたきっかけで片方が裏返ってしまうと、反発は避けられれない。なんとなく、「響け!ユーフォニアム」の鎧塚みぞれと傘木希美を連想する。

作中の様々なシーンに対して「あの時こうだったら…」を考えてしまう。鉄雄の前にタカシが現れなければ。連行されそうになる鉄雄を金田が引き留めることができたら。それらのタラレバが残念な方向に回転し続けた結果が「AKIRA」という物語に他ならないんだけど、金田も鉄雄も若くて愛嬌のあるキャラクターだから、2人には幸せになってほしかったなあと思ってしまう。僕の視点はもうすっかりおじさんだ。

いまは2020年。東京オリンピックは新型コロナウィルスの影響で延期が決定し、世界はいまだに混乱の中にある。それは「AKIRA」のように退廃的・暴力的な混乱とは毛色が違うけど、なんだかリンクするような気もしてしまう。現実の世界では、金田と鉄雄のような悲しい別れが少しでも少なくなればいいね。